最近、流行りの言葉に「タイパ」がある。
もうご存じと思うが「タイムパフォーマンス」の略だ。

SNSの動画でも何でも早送り。
情報をできるだけスピーディに得たいという
ニーズと環境から生まれた言葉だ。

私自身もたまにやる。時間が無いからと
録画しておいたドラマなど
大事な部分だけピックアップして
あとは飛ばして見てしまう。

我ながら、
時間が無いなら見なきゃいいのに、とも思うのだが。

最近では本の要約サービスもあると聞いた。
どんな本なのか概要を聞いて、
その後にじっくり読むがどうかを決めるためか。
それも納得のいく話だ。

だが、ふと気になる。

上記のサービス、経験したことはないのだが
どんな風に要約してくれるのだろう?

人は、自由に本を読む。
例えば目次を俯瞰して眺め、
自分の価値観で良し悪しや
重要度を判断する。

つまり自分の物の見方で勝手に本を要約して
価値を決めている。

それを人様からやっていただくとなるとどうなるのか?
細かい話なのかもしれないが気になる。

最近、手間がかかることはもちろん、
自分の頭を使って試行錯誤してこそ意義あることも、
何から何まで、人様に頼るようになった気がする。

選択を失敗する、それはそれで
学びとしてい意義がある気もするのだが。

もちろん、これからの世の中は古い時代とは
全く違う次元で高度に頭を使う時代になるのだろう。
世の中はどんどんスピードアップもするだろう。

だが、中小企業を支援する現場はまだまだ泥臭く、
昔ながらの地頭が要求されることも多い。

そのうえ、診断士といっても、事は人間相手の商売だ。
企業は「人」の思考の塊でできている。

人と人とを調整するために
頭が熱を持つくらいにじりじりと考えさせられ、
時間がかかる場面も多い。

もちろん、本試験もそうだ。
自力でスムーズに解けるようになるための過程は、
時間がかかる勉強ばかりだ。

なのに、楽で速いコトばかり選び、
探していいのかなあ。
どうにも違和感を感じる。

診断士として、「生き残る」能力は退化していってないか?
そう不安になるのだ。

楽はいい。早いのもいい。生産性が高いのもいい。

けれど、それだけでは片付かない場合、
問題を乗り切れるだけの頭は今も残っているか?
退化していないか?

魅力的な「タイパ」という言葉の裏で、どうにも気になるのだ。

「考える力」という育てるのに時間がかかる能力が
私たちの仕事には必要なのになあ、と。
bird101