今日は、昨日からの続き、
ある中古車販売会社の2代目社長の話だ。

創業者の父が病になり、30代の若さで
社長職を継いだ彼は、父のようになるために、
とにかく父の真似をしていった。

豪放且つ快活で、誰からも慕われる父のように
なりたかったのだ。

だが、彼は勘違いをしていた。
父は何もせずに人から慕われていたわけではない。

父がいつも思っていたのは、
常に「誰かのために」だった。

だが2代目はこれを忘れていた。

誰かのためではなく、自分のために
従業員には働いてほしいと思っていた。
そして社長として尊敬してほしいと。

その心が顕著に表れた出来事がある。

彼は従業員を労うことをしなかった。
口先の「ありがとう」は言えても、
心からの「ありがとう」が言えなかった。

そして、自分にひれ伏す従業員は、
能力に関係なく、出世させていった。
影で頑張る人が報われない会社になった。

そしてさらに、会社の金も
私用にどんどん使った。

中古車が販売不振の時でも、
会社の費用で、自分の趣味の物を買い漁った。

それは、歳を重ねる事ごとにそれはエスカレートした。
最後には、会社を経営する目標が、
顧客や従業員のためではなく、
「俺は親父を超える!」になってしまったのだ。

親父がやらなかったことをやって、
親父より儲ける!これを目標として
しまったのだ。

これまで父が培った資金で、
不動産や株を買い漁った。
金融にも手を出し、大都市圏にも営業所を作った。

父は、従業員と一緒に汗を流して働き
成功していった、実業の人だった。
だがそれ見て彼は、「俺はもっと賢い儲け方をする。」
と勘違いしてしまったのだ。

あれはバブルの頃だった。
バブルがはじけ、その後彼がどうなったのか?
容易に想像がつくだろう。

当時、創業者は病に倒れてしまい、
彼に経営の本質を教えることができなかったのかもしれない。

だから2代目は必至に父の「影」を追い続けた。
そうして、最後は、自分が、誰からも必要とされない
「影のような」社長になってしまったのだ。

その後彼は、全てを失っていった。
むなしくて、とても残念なお話しだ。
あの時、側に診断士でもいれば・・・。
この話を思い出す度に思う。

kohan1